日本清酒発祥の地、奈良の歴史に興味がわいて
この本のサブタイトルは
「日本酒の歴史と油長酒造の歩み」
フェイスブックの広告でこのタイトルを見て、興味がわいたので読んでみました。日本酒発祥の背景も知りたいと思ったし、広告のさわやかな風景にも惹かれました。
なぜお寺でお酒造りをしていたか
書き出しは、日本清酒発祥の地と言われる所以となった古い記録を読み解くところから始まりました。平城京の遺跡から発見された木簡から、平安時代の人々がお酒を造っていたという痕跡が読みとれること、また、「御酒之日記」という文献には、室町時代の酒造りの製法が詳しく書かれていました。
まず私が「え?」と思ったのは、お坊さん達が日本酒を醸造していたことです。
お坊さんって、ベジタリアンだよね?食生活も慎ましいはずなのに、寺で坊主が酒盛り??
え?なんで??と違和感で興味深く読み進むことができました。
どうしてお坊さんが日本酒を醸造していたかというと、それは現金収入のためだそうです。
応仁の乱以降、国がバラバラになってしまい、幕府も朝廷もお金が集まらなくてお寺の方へ予算がつけられなくなりました。そこで、おおきな寺院は必要に迫られ、独立経営へと歩んでいきました。
内戦の後1400年~1600年の200年間に、頼りない政府のもと、国民がてんやわんやの激動の時代です。奈良の中心的なお寺の賢いお坊さんたちは試行錯誤で寺領を守り、持ち前の知性で醸造技術を向上させ、遠方へまで日本酒を流通さることに成功。そうやって若き修行僧を食べさせ、存続してきたのでした。
読みやすい本なのですが、この辺りで私の思考が飛びました。
天災、疫病、戦争、困難な時代の政府
→ 国家的ピンチ
→ 国民が奮闘
この構図は今まさに現代と同じで歴史は繰り返してるかと…
そのような考えが頭の中をめぐりました。
ここは昔の奈良のお寺さんに倣って、領土内で充分自分たちの食べ物が賄えるようになった方がいいんじゃないかと思いました。
それでもって、お坊さん達みたいに美味しい飲み物をじゃんじゃん造っちゃって外へ売ったらいい。そしたら世界の人々までほんわかハッピーになって、争いもやめて仲良く乾杯したくなるよ!!
室町時代の酒が現代によみがえる
次にこの本を読んでワクワクしたのは、お坊さん達のお酒を再現するべく、若手蔵元の有志が集まり、研究をすすめるくだりです。
これは菩提酛による清酒製造研究会といって、先代社長さんの頃から始まった取り組みだそうです。普段は商売敵であるはずの、近隣蔵元さんが集まって学ぶサロンのような会合を想像するだけでワクワクします。それから、水の成分を化学的に分析して室町時代の水を探すところや、次の代にスピリットが受け継がれていくところにロマンを感じました。
この章だけで、ハリウッド映画がつくれます。
風の森が人気の理由
お米や水といったお酒造りの解説もありますが、日本酒のことがあまりわからない私にもわかりやすく書かれていました。
前章で代々の社長さんたちの功績なども知ることができたので、それをふまえた上で、蔵が目指しているものが明確でわかりやすかったです。
あとがきにあります、会社の3つの取り組みについても、具体的に書かれていました。
社員の方々もきっと同じ想いで、まっすぐに同じ方向をむいていることでしょう。
とにかくこの本全体に言えることは、社長の13代山本長兵衛さんの語り口調が、ゆったりとやさしいことです。
まだこちらのお酒をいただいたことがありませんが、ほんわか温かい気持ちが稲穂をゆらす風のようにふうっと私の心に吹き抜けました。



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